サイエンス 投資 経済学

景気後退と太陽黒点の減少との関連性

2020年5月11日

『太陽活動と景気』 嶋中雄二 著

  • 著者: 嶋中雄二 著
  • 出版社: 日本経済新聞出版社
  • 発行日: 2010年1月5日
  • 版型: Kindle版,    文庫
  • 価格(税込): Kindle版: ¥817-,     文庫: 絶版

 

ロイターが報じた太陽黒点極小期と暴落予測

2020年3月9日のロイターのニュースで、「新型コロナショック、太陽黒点が示唆するブラックスワンか」という署名記事(植竹知子、佐野日出之)が出て、興味深く読んだ。

その記事によれば、「2020年夏ごろまでに世界金融市場を揺るがすリーマン級のショックが起きる可能性がある」というリポートを日銀出身のクレディ・スイス証券チーフエコノミスト、白川浩道副会長が昨年2019年10月から国内外の顧客に向け発信をしたという。その予測の根拠としたのが、太陽活動の活発さを示す黒点の数のサイクルが極小期に差しかかっていたことだった。太陽黒点の極小期、すなわち、太陽活動の活発さの減少というサインを「金融市場の大波乱が近い」という予兆だと読んだのだという。

一部のヘッジファンドは、この予測に強い関心を示したという。しかし、当時は米国ではS&P500種指数が連日上場高値を更新し、日本でも日経225が1年ぶりに2万3000円台を回復するなど、日米の金融市場がそろって楽観ムードに覆われていたため、白川氏自身もどこにリスクの芽があるのか測りかねたと、ロイターの記事は書いている。

なお、「ブラックスワン」とは、「ありえない」とされていたことが勃発すると強烈な衝撃を与えることを言い、予期せぬ金融危機などを意味する。

 

ちなみに"SpaceWeatherLive.com"の解説によれば、太陽黒点、つまり"Sunspots"とは以下のようなものと説明されている。

 

"Sunspots are a common sight on our Sun during the years around solar maximum. Solar maximum or solar max is the period of greatest solar activity in the solar cycle of the Sun, where one solar cycle lasts about 11 years. "

<以下拙訳>

「太陽黒点は太陽の極大期によくみられる。太陽の極大期は太陽活動が最も大きな期間であり、ひとつのサイクルは11年間である」 ("SpaceWeatherLive.com")

 

 

太陽活動と経済活動の関連仮説

本書の著者 嶋中雄二は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所長で、早稲田大学大学院公共経営研究科客員教授である。

嶋中によれば、太陽活動と経済活動とを結びつける考え方は19世紀から存在したという。限界効用価値説を提唱したイギリスの経済学者ウィリアム・S・ジェヴォンズは、1876年に科学誌『ネイチャー』で論文「商業恐慌と太陽黒点」を発表した。太陽黒点周期の10.45年と、欧州の恐慌の周期の10.466年と、ほぼ一致していることを発見したのだった。ジェボンズは、この原因として、インドや中国の穀倉地帯の収穫量に太陽活動が影響して、その結果欧州の経済活動に影響しているのではないかと仮説を立てたが、C・ガルシア・マタとフェリックス・I・シャフナーは、1876年から大恐慌の1932年までのほぼ半世紀、太陽黒点の数とアメリカの農業生産とは相関関係が見られず、むしろ、太陽黒点の数と鉱工業生産とは著しい相関関係が見られたと1934年に発表した。太陽活動が鉱工業生産に影響する理由として、マタとシャフナーは、太陽の紫外線放射の周期的増減が人間心理に影響している可能性を推測した。

 

 

景気循環周期と太陽活動周期

景気循環周期には、よく知られている以下の4つの周期がある。

  1.  キチン循環──40か月
  2.  ジュグラー循環──10年~11年
  3.  クズネッツ循環──20年~22年
  4.  コンドラチェフ循環──50年~60年

嶋中雄二は、こうした従来からある四つの景気循環周期に、太陽活動における四つの周期性がそれぞれ当てはまることを見出したという。その太陽活動の四つの周期性とは、以下のようなものである。

  1.  エルニーニョサイクル──3.5年
  2.  シュワーベ・サイクル──11年
  3.  ヘール・サイクル──22年
  4.  吉村サイクル──55年

 

太陽活動と疫病蔓延との関連

英国ウェールズ大学のホイルとウィックラシンゲは、1761年以降に発生した17回の世界的インフルエンザの流行と、太陽黒点の周期との密接な関連性を発見し、その論文を1990年に科学誌『ネイチャー』に発表したという。

疫病のパンデミックが、太陽活動の極小期に起きるとすれば、ロイターが報じた「太陽黒点極小期と暴落予測」は、パンデミックによる経済への打撃という事由でつながることとなる。

太陽活動と経済活動との関連性や、太陽活動と疫病蔓延との関連性は、あくまでもまだ仮説にすぎないが、今後も研究を注視すべき分野であると思える。

 

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石川 雅一

石川 雅一

 東証ペンクラブ 会員。学校法人評議員。 元日本放送協会で国際報道に従事。アフガニスタン内戦、カシミール内戦、パンチャヤト大暴動( ネパール)、湾岸戦争、アメリカ航空宇宙局(NASA)、国連安全保障理事会、ニューヨーク市警、米国核廃棄物、ロスアラモス国立研究所、米国海軍、米加漁業紛争、京都の歴史文化伝統産業などを取材。国際機関アジア太平洋放送開発機構講師(JICA専門家)としてクアラルンプールでアジア各国の放送局のジャーナリストを育成指導。金融市場分析のテクニカルアナリストとして日本の全産業三千数百社の上場企業のテクニカル分析をダイヤモンド社で三季にわたって完遂。  早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程中途退学。早稲田大学大学院商学研究科専門職学位課程修士(研究科長賞受賞)。MBA( Le Cordon Bleu; Global Service Business, WBS)。Certified Financial Technician(CFTe Ⅱ)。 一級小型船舶操縦士、剣道初段、趣味は能楽。

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