『馬渕睦夫が読み解く2021年 世界の真実』 馬渕睦夫 著
- 著者: 馬渕睦夫 著
- 出版社: WAC
- 発行日: 2020年9月10日
- 版型: キンドル版・新書
- 価格(税込): Kindle版:¥880、 新書:¥990.
元駐ウクライナ大使・元防衛大学校教授の著者
著者の馬渕睦夫は、京都大学法学部3年生の時に外務公務員上級試験に合格して外務省に入省し、研修先の英国でケンブリッジ大学経済学部を卒業している。
2000年に駐キューバ大使、2005年に駐ウクライナ大使兼モルドバ大使に就任し、外務省退官後に防衛大学校教授に就任した。
馬渕氏が本書で述べていることは、以下のように概略できるように思える。
- 武漢肺炎危機を契機として、今日まで百年続いてきた世界秩序は崩壊する。
- 来年2021年を、後世の歴史家は「ハルマゲドン元年」と記録するかもしれない。
- 武漢肺炎危機後に激しい経済収奪戦が始まる。
- その「ハルマゲドン」(世界最終戦争)は、2030年ごろまで十年ほど続く可能性がある。
- 「国家内国家」と言われる「ディープ・ステート」は、トランプ大統領の再選を阻止するべく策動している。
- 「ディープ・ステート」とは、ユダヤ系左派の国際金融資本のことである。
- 旧ソ連と中共は「ディープ・ステート」の後押しで台頭した。
- トランプ大統領の再選阻止のために「ディープ・ステート」と中国共産党は共闘を開始した。
- しかし「ディープ・ステート」は最終的に中共を潰す方針を持っている。
- アメリカ大統領選でトランプが勝つかバイデンが勝つかで今後の方向性が決まる。
- トランプが勝てば、軍事的紛争は回避されて平和的手段で主権国家中心の新たな世界秩序を構築する方向へ向かう。
- バイデンが勝てば、世界は軍事的な熱戦に突入し、全体主義的な世界統一政府の方向へと向かう。
- グローバリズムとは、「ディープ・ステート」による世界制覇の手段である。
元大使で元教授の割には、きわめてセンセーショナルな言葉、特にアカデミアの人々が使うのを忌むような言葉が堂々と使われている。それは、すなわち、「ハルマゲドン」とか、「ディープ・ステート」という言葉である。しかしそこは、歯に衣着せぬ馬渕氏らしいと私には思えた。よく陰謀論で漠然とした意味で使われているのとは違って、本書では、「ディープステート」という言葉の定義もはっきりしている。つまり、「ユダヤ系左派の国際金融資本」という意味である。
外国による不動産購入を規制せよ
武漢に発したコロナウイルスで世界経済は青息吐息になっているが、歴史を振り返ってみれば、1929年にニューヨーク株式市場が大暴落して始まった世界大恐慌の時に何が起こったのか。失業者が増大し、倒産する企業が続出し、結果として、それらの企業群を金融資本が二束三文で買い漁ってその傘下に収めた。
こうした過去の歴史的事実を踏まえて、「武漢ウイルスはなくなりましたが、日本の優良企業や日本の優良な土地不動産は国際金融資本と中国の資本にほぼ全部奪われました」ということだけは避けなければならないと馬渕は主張する。
馬渕は、日本は外国勢力による企業買収に制限を加えるべきで、さらに日本は外国人が土地を購入することにあたって一定の規制措置を講じるべきだと言う。外国人が土地を購入するにあたって一定の規制を掛ける法律はどこにでもあり、日本もつくればいいだけだという。WTO(世界貿易機関)の「内国民待遇」、すなわち、「日本人は自由に不動産を買える。WTOのメンバーも同じように待遇する」というのを理由に日本は規制してこなかったが、「相互主義」を宣言すればよいだけのことだと馬渕は言う。すなわち、日本人は共産国家の中国で土地を買えない。だから相互主義で中国人が日本の土地を買えなくすればよいだけのことだと述べている。
武漢肺炎危機後の経済収奪戦の世界を生き残るためには、旧態依然とした国際協調的な認識を持っているような与党政治家の幹部クラス、高級官僚、経団連のような経済人は総入れ替えしなければダメだと馬渕は言う。
金持ちの為のグローバリズムを捨てよ
グローバリズムは自国や自国民の福利を第一には考えないと馬渕は言う。企業活動を海外の人件費の安い途上国で展開し、国内経済をほったらかして、金持ち同士がつるんでひたすら自分たちの利益だけを追求するので、自国民の利益や福利はまったく眼中にないという。中国に進出した日本の企業は自分たちだけの利益をあげていたが、日本人の賃金は下がり、日本国民の利益にはなっていなかった。
グローバリズムに抵抗して、トランプ大統領は「製造業よ、アメリカの地に帰ってこい」と言った。そのことに、グローバリズムを推進してきたディープ・ステートは震撼し、国際金融資本は反トランプに転換したのだという。
馬渕氏は、金持ちだけのためのグローバリズムに反対する愛国者的政策の本質を次のように述べている。
- 国家の善政は愛国者にのみ実現可能である。
- 歴史に根差し、文化に育まれ、伝統的価値を大切にする愛国者が未来を築くことができる。
- 愛国者こそが、自由を守り、主権を維持し、民主主義を継続し、偉大さを実現できる。
- リーダーがなすべきことは、祖国を建設し、文化を大切にし、歴史に敬意を払い、国民を宝とし、自国を繁栄させることである。
- 世界平和への道は、自国を正しく収めることから始まる。
本書は、センセーショナルな言葉を敢えて使いながらも、歯に衣着せず、国際政治と国際経済の本質に迫った屈強なる書である。
温厚でいながら鋭さきわまりない馬渕睦夫氏の舌鋒が各所で突き刺さる。馬渕さんのファンならば必読の書であるし、民主党のバイデンを応援しているのでなければお薦めできる。
『馬渕睦夫が読み解く2021年 世界の真実』 馬渕睦夫 著