『地図でよくわかる 鉄道大百科』
- 編集人: 岡 陽子
- 出版社: ジェイティビィパブリッシング
- 発行日: 2020年6月17日
- 版型: 単行本
- 価格(税込): 単行本: ¥1540-
日本の全駅ふりがなつき鉄道地図本
鉄道旅が好きな私(書評者)は、こんな本が欲しいと思っていたのですが、実際にこんな本があるとは思いませんでした。
「こんな本」とは、全国の鉄道路線図の全駅名に「ふりがな」が振ってある地図を、大きな版型で出版した本のことです。
しかも、大きな版型と言っても、高価な豪華本ではなくて、千円台の手ごろな値段で、日本のすべての鉄道路線を網羅したフルカラーの単行本のことです。
そんな本があったのです。それが、本書、『地図でよくわかる 鉄道大百科』でした。
実は、私は時刻表の路線地図を見るのが好きなのですが、いつも困った問題を抱えていました。それは、読み方がわからない、もしくは読みが不確かな駅名が時々みつかるということでした。その都度、iPhoneで駅名を検索して想像した駅名と正しく合っているかを調べるのでしたが、面倒くささは否めなかったのです。
次の地図は『JR時刻表』に載っている琵琶湖周辺の路線図です。
上の写真は『JR時刻表』の地図です。
そして、次の写真が、本書:『地図でよくわかる 鉄道大百科』に掲載されている、琵琶湖周辺の路線図です。両方の地図をご覧になって言わずともおわかりになるように、本書の地図は『時刻表』の地図ほどデフォルメされてはいません。デフォルメされているほうが、パッと見で駅名を見つけやすいという利点があります。しかし、地理的要素を鑑みながら地図を楽しむには、やはりデフォルメされていないほうが楽しめるように思えるのでした。
私の好きな湖西線。湖西線の路線図を見ているだけで、しばし幸せになれる感じがします。光る湖(うみ)が目に浮かぶからです。
駅名には難読漢字がいっぱい
本の半分のページは日本地図です。でも、すべての駅名や地名にふりがなが振ってあるのでよくわかります。駅名や地名には読めない漢字が多いので、大人でも本当に助かります。
たとえば、次に挙げる「駅名」(所在県)を読めますか?
とりあえず、西日本だけ、12駅だけ挙げます。
次の「駅名」の読みは??? (答えはあとに。)
1 鳥栖(佐賀県)
2 東都農(宮崎県)
3 南風崎(長崎県)
4 薊野(高知県)
5 厚東(山口県)
6 忠海(広島県)
7 妹尾(岡山県)
8 川跡(島根県)
9 安曇川(滋賀県)
10 膳所(滋賀県)
11 芳養(和歌山県)
12 河曲(三重県)
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答え
1 とす
2 ひがしつの
3 はえのさき
4 あぞうの
5 ことう
6 ただのうみ
7 せのお
8 かわと
9 あどがわ
10 ぜぜ
11 はや
12 かわの
たとえ西日本のいずれかの近辺在住の方であったとしても、上記の12駅のうち半分以上正しく読めた方がいたとしたら、書評者はその方を尊敬します。
本書の地図を見ているだけで、鉄道旅行の気分を味わえます。
市場セグメンテーションの疑問
本書は素晴らしい本だと私(書評者)は如実に感じましたが、その一方で、本書のマーケット・セグメンテーション、すなわち、マーケットのどの部分の方をターゲットにして売っていくかという設定に、ほんの少しだけ疑問も抱きました。
というのは、本書は、子供のための「こども絵本」として売り出されているのです。表紙にも左上に「鉄道キッズ集まれ!」と青文字でタイトル脇に大きく記されています。
「え、いや、これ、確かにこども絵本としても売れるだろうけど、大人の絵本にして、大人にも子供にも売った方がいいんじゃね?」などと、老婆心ながら思ったのでした。なにせ、大人の本にはませた子供は飛びつきますが、一旦子供本として定義してしまうと、大人は滅多に喰いつきませんから。実は、私も本書を手にするまでに、中身を見るまでは、だいぶ決心が要りました。
なお、地図は本書の全97ページの内、ほぼ半分を占めます。
地図以外には、次の写真のように、その路線を走っている鉄道車両の写真とその説明が主に載っています。
本の大きさは、縦30㎝×巾21㎝。見開きの巾は42㎝とかなりの大きさでフルカラーなので、見ていて飽きません。
想像を超えて、素晴らしい本でした。
子供用?・・・ いや、大人にこそ、こういう本は必要でしょう。
単行本