『祇園祭のひみつ』 山岡祐子 編
- 著者: 山岡祐子
- 出版社: 白川書院
- 発行日: 2008年7月1日 (新版は2018年6月1日)
- 版型: 単行本
- 価格(税込): 単行本: 新版は ¥1,320円
神事日程と山鉾図解
祇園祭は「日本三大祭り」のひとつだ。「日本三大祭り」は、祇園祭、天神祭、神田祭とされている。(地方により、他説もあり。)
本書の構成は、主に前後ふたつにわかれている。前半は祇園祭の行事・神事の日程とそれぞれの意味の解説である。祇園祭には、次のような行事・神事がある。
「吉符入(きっぷいり)」から始まって、「くじ取り式」、「社参」、「稚児舞披露」、「鉾建て」、「山建て」、「曳初め(ひきぞめ)」、「屏風祭(びょうぶまつり)」、「宵々山(よいよいやま)」、「宵山(よいやま)」、「山鉾巡行(やまぼこじゅんこう)」、「くじ改め(くじあらため)」、「神幸祭(しんこうさい)」、「花傘巡行」、「還幸祭(かんこうさい)」・・・などなど、数多くの行事と神事がある。これらのことがそれぞれいつどこで、どのように行われるかが前半では写真と共に書いてある。
そして後半は、神輿や、山(やま)と鉾(ほこ)のフルカラーイラストによる紹介である。このカラーイラストが、写真よりもわかりやすくてよい。山や鉾の各部分部品の名称紹介などは、きわめてマニアックで、さすがは京都の出版社によるガイドブックだと感心させられた。
鉾の屋根の上に立っている長い柄(え)の部分を真木(しんぎ)と呼ぶらしいが、長刀鉾では、この真木の全長が20メートルもあるという。
祇園祭は「動く美術館」とも言われているが、たとえば、「懸装品」といって、鉾などを飾っている歴史あるタペストリーの本物が見られる。実際、「函谷鉾(かんこぼこ)」に飾られる懸装品「イサクに水を供するリベカ」というタペストリーは、日本では室町時代末期から安土桃山時代にかけての頃に、ベルギーのフランドル地方で製作された絨毯と伝えられている。
2020年の祇園祭はコロナウイルスで中止へ
しかしながら、まことに残念なことに、今年2020年7月の祇園祭の山鉾巡行は、新型コロナウイルス感染防止のために中止の方向で検討されていると、京都新聞などによって報道された。
祇園祭は日本三大祭りのひとつだが、京都には京都三大祭り、すなわち、葵祭、祇園祭、時代祭がある。そして、既に(3月31日に)、葵祭の「路頭の儀」(5月15日開催予定)の中止が発表されている。
山鉾巡行は、前祭(さきまつり)(7月17日)に山鉾23基、後祭(あとまつり)(7月24日)に11基の花笠などが出る。昨年の前祭には約12万人もの観客が訪れていたという。
新型コロナウイルスが蔓延している時だけに、祭りの趣旨からいえば、なおさらのこと、祇園祭はやってもらいたいと思っている京都の町衆は多いだろう。
なぜならば、祇園祭が始まった歴史的由来というのは、9世紀の平安時代初期に京の都をはじめ全国に疫病が流行り、その疫病平癒の願いを込めて祭りを始めたという由緒があるからである。疫病退散を祈念するために、朝廷は今よりもはるかに広大だった「神泉苑」に諸国66か所の祈願をするために、66本の鉾を立てて、そこに祇園の神を祭祀し祈りたてまつったという。
新型コロナウイルスという疫病が全国各地に蔓延している今だからこそ、祇園祭をとりおこないたいと思う京都の町衆の気持ちは痛いほどにわかる。
ただ、歴史を振り返ってみると、近代に入ってから、明治時代にコレラが流行したときに、祇園祭を延期したことがあったという。
今のところ、山鉾巡行のみならず、宵山も見送られる見込みだとされている。まことに残念なことだが、現代的な感染防止予防の観点からは、どうにも仕方がないことだろう。
『祇園祭のひみつ』単行本
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