『易(えき)入門』 黄 小蛾 著
- 著者: 黄 小蛾
- 出版社: サンマーク出版
- 発行日: 2004年4月30日
- 版型: Kindle版、 単行本
- 価格(税込): Kindle版: 990円、 単行本: 1,430円
「よく当たる」易者が書いたロングセラー
「よく当たる!」・・・ 巻末の著者紹介によると、本書著者の黄小娥(こう しょうが)は、「1913年生まれ、昭和30年代に【謎の美人易者】として彗星のごとくあらわれ、その深い洞察力と驚異的な的中率で各界に多大な影響をあたえた」とある。本書の特徴は、「10円玉6枚ですべてが占える」としている点である。本来は難解きわまりなくて易者だけがわかるとされていた「易(えき)」の世界を、著者は簡単な言葉で説明した。しかも、筮竹(ぜいちく)などという専門の道具を使わなくても、誰でも手元にある10円玉たった6枚を使って占うことができるようにしたのであった。だから、26年前に出た本書は、そのわかりやすさとユニークさゆえに、その後も版を重ねて、四半世紀が経った現在でも単行本は絶版になることもなく売れ続けているのだろう。
占い師でなくても高度な占いを自分でできるようにした
こういう本が出たら商売あがったりだと思う占い師もいたかもしれない。なにしろ専門家でしか占えないとしていた高度な「易」占いが10円玉6枚で自分でできるようにしてしまったからである。
「易(えき)」は、中国の古典書『易経(えききょう)』に書かれた理論で、そもそも「易」とは「変化」を意味する。この世の中、宇宙のすべては成長しながら形作られていく。その「変化」を指して言ったのが「易」なのである。
「易」のシステム自体をまとめて言うと次のようになる。世界は陰(マイナス)と陽(プラス)に分かれている。陰陽どちらが重要ということではない。どちらも重要な働きをもっているからだ。そして、陰と陽はそれぞれ、8つずつの要素を持っている。この陰陽それぞれ8種を重ね合わせると、8×8=64 という組み合わせになる。つまり、易占いの結果は64種類の答えがあるということである。もちろん、その占いの結果は、良い答えもあれば、悪い答えもある。
この64種類の答えを占いで出すための道具として、古来より占い師たちは、筮竹(ぜいちく: シナチクではない!)などを使ってきた。黄小娥は、それを十円玉(百円玉や1円玉や5円玉でも同じこと)6枚でできるように考案したのだった。
10円玉でできる仕組み
陰と陽はそれぞれ8つの要素を持っていると上記で説明したが、この8つの要素とは、以下のものである。
- 天
- 沢
- 火
- 雷
- 風
- 水
- 山
- 地
私(書評者)が著者は天才だと感じた点は、この陰と陽を硬貨(10円玉)の裏と表に仮託したことである。
「コイン6枚を振って、下から順番に並べる。たとえば・・・10円玉なら、日本国・十円と書かれている面が表(陽)」と本書には書いてある。
このお約束で、間違えないように確認したいのは、
- 下から並べる
- 日本国・十円と書かれている面が表(陽)
ということである。特に2が間違えやすい。どちらの面にも、「10」そしてその反対側には「十円」と書かれている。
「10」と大書されているほうは裏面なのである。「日本国」と書かれていて漢数字で「十円」とあるほうは片方だけであり、「日本国」と漢数字で「十円」とあるほうが表なのである。
占いの手順は次の4つのプロセスである。
- コインを6枚用意する(十円玉でも百円玉でも五十円玉でも5百円玉でもOK)
- 占おうとする問題だけを考えながら硬貨6枚を手の中で何度か振る。
- 1枚ずつ「下から」順番にその6枚を並べる。
- 「下から」並べたその6枚の硬貨の順列を、今度は「上から」読んでいく。
というプロセスになる。
たとえば、下(した)から並べた順列を上(うえ)から読んで、「表・裏・表・表・裏・裏」 だったとするならば、「火山旅(かざんりょ)」「不安に満ちた旅人」という占い結果になるし、
もしもそれが、「表・裏・裏・裏・表・表」だったとするならば、その意味は、「山沢損(さんたくそん)」つまり、「愛のこもった贈り物」という意味になるという。
それらがどういう意味かということは、本書に具体的な解説が書いてある。たとえば、「火山旅」という結果ならば、「さびしさと不安と苦労がつきまとっている時です」とある。
また、「山沢損」という結果が出たならば、「出費はまぬがれません。しかし、それはなんらかの形で、あとで返ってくるお金なのです」とある。
本書について、「26年前に出た本書は、そのわかりやすさとユニークさゆえに、その後も版を重ねて、四半世紀が経った現在でも単行本は絶版になることもなく売れ続けているのだろう」と私は述べたが、よく調べると、それは、原書の表記や表現だけ直して再出版した「改訂版」の出版年であった。そもそもの原書の出版年は1961年だという。つまり、本書はほぼ60年前に出版されていたのだ。それが、現在まで60年間もの時を経て人々に愛され絶版になることもなく出版され続けているということに、敬服の念を禁じ得ない。とてもわかりやすく「易」のコンセプトを理解できる本として、今後も長く読み継がれていくことだろう。
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