MBA マーケティング 経営学

ブランド・レレバンスとは何か

2020年4月19日

『カテゴリー・イノベーション』 D・A・アーカー 著, 阿久津 聡 監訳, 電通ブランド・クリエーション・センター 訳

  • 著者: D・A・アーカー 著, 阿久津 聡 監訳, 電通ブランド・クリエーション・センター 訳
  • 言語: 日本語版
  • 出版社: 日本経済新聞出版社
  • 発行日: 2011年11月24日
  • 版型: 単行本
  • 価格(税込): 単行本:¥3,080円

 

「カテゴリー・イノベーション」

本書を手に取って、少なくとも私は少なからず戸惑いを感じた。それは、本書の日本語書名(タイトル)の付け方が、少なからず英語原題と乖離していたからである。本書の原題は、"Brand Relevance"である。

でも、「電通ブランド・クリエーション・センター 訳」という訳者を見て、ああ、なるほどとも思った。広告のプロが自分たちの広告用語知識をもとにして、同じく広告業界や広告出稿会社の人間に売るのに、わかりやすい名前を考えたとしたならば、「カテゴリー」とつけるのは、とてもありえそうだなと感じたからである。

確かに、本書にはカテゴリーの話はもちろん載っているし、「ブランド・レレバンス」という概念が「カテゴリー・イノベーション」の基礎となる重要な考え方だと冒頭には述べてある。訳者や監訳者も原著者に翻訳タイトルの変更について了解をとっているはずだと私は信ずるが、ただ、このタイトル変更が功を奏したかについては別の問題だとも思える。

タイトルの件は別として、本書は実に興味深く面白い本である。最初の事例が日本のビール業界の「アサヒスーパードライ」のケースや「キリン一番搾り」の事例から始まるので、初学者や一般の人にとっても、特に日本人にはきわめてとっつきやすい本だろうと思える。

 

ブランド・レレバンスとは何か

アーカーによると、ブランドは、消費者のブランドの購入には、次の4つの段階が存在するという。

  1.  カテゴリー選択
  2.  候補ブランドの選択
  3.  購入ブランドの決定
  4.  ブランド体験

1の「カテゴリー選択」の「カテゴリー」とは、いわば、商品分類の範疇(カテゴリー)による区分けのことである。自動車で言えば、「セダン」、「ミニバン」、「SUV」などがある。SUVとはスポーツ・ユーティリティー・ビークル(Sport Utility Vehicle)の略である。ところが、消費者は「コンパクト・ハイブリッドカー」といった範疇も考慮したりする。つまり、消費者が商品を選択する段階で頭のなかで考える分類とその範疇をどのように創造していくかが重視されなければならない。

アーカーは、以下の2つの条件が満たされたときにブランド・レレバンスがあると定義している。

  1.  対象となるカテゴリーやサブカテゴリ―(カテゴリーの下位にある小さな区分け)が選ばれ、そのカテゴリーに顧客ニーズがあって、そのカテゴリー自体に属性や使用法やユーザー層や商品特性によって定義できること。
  2.  そのブランドが消費者の最初のスクリーニング(取捨選択)に生き残ること。

"relevance"(レレバンス)とは、「関連性」という意味であり、書評者流にぶっちゃけて言えば、カテゴリーとの「ひもづけ」のことである。

ただし、ブランド・レレバンスの有無は、必ずしも白黒はっきりつくとは限らないし、時にはレレバンスに幅があったり、あいまいだったりすることもあると、アーカーは言う。そして、どのブランドにレレバンスがあるのかについての不確実性は、カテゴリーやサブカテゴリ―の定義が明確であるかどうかに左右されるとしている。なお、繰り返しになるが、カテゴリーやサブカテゴリーは、ブランドではない。ブランドを包含する範疇である。

本書は、わかりやすい実例ケースに富み、米国では、「ブランド・レレバンス」の重要性について説明したアーカーの名著とされている書籍である。それだけに、私は原書名にこだわったのだったが、確かに「カテゴリー」を意識するとわかりやすい概念かもしれない。本書は、ブランドや広告に携わる人々はもちろんのこと、商品開発やマーケターにとっても必読の書だろう。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事
石川 雅一

石川 雅一

 東証ペンクラブ 会員。学校法人評議員。 元日本放送協会で国際報道に従事。アフガニスタン内戦、カシミール内戦、パンチャヤト大暴動( ネパール)、湾岸戦争、アメリカ航空宇宙局(NASA)、国連安全保障理事会、ニューヨーク市警、米国核廃棄物、ロスアラモス国立研究所、米国海軍、米加漁業紛争、京都の歴史文化伝統産業などを取材。国際機関アジア太平洋放送開発機構講師(JICA専門家)としてクアラルンプールでアジア各国の放送局のジャーナリストを育成指導。金融市場分析のテクニカルアナリストとして日本の全産業三千数百社の上場企業のテクニカル分析をダイヤモンド社で三季にわたって完遂。  早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程中途退学。早稲田大学大学院商学研究科専門職学位課程修士(研究科長賞受賞)。MBA( Le Cordon Bleu; Global Service Business, WBS)。Certified Financial Technician(CFTe Ⅱ)。 一級小型船舶操縦士、剣道初段、趣味は能楽。

-MBA, マーケティング, 経営学

Copyright© 石川雅一の書籍漂流  , 2020 All Rights Reserved.