『3000日以上、毎日スープを作り続けた・・・』 有賀 薫 著
- 著者: 有賀 薫
- 言語: 日本語版
- 出版社: 文響社
- 発行日: 2020年3月17日。Kindle版は2013年8月15日
- 版型: Kindle版・単行本
- 価格(税込): Kindle版:¥1,267-、 単行本: ¥1,408-
簡単なレシピ、そして、長い書名
最近流行っている料理研究家をみると、シンプルで簡単ということが特徴として挙げられるようだ。
私もキャラが大好きな、「ようつべ」でバズったリュウジさんも、誰でも作れる簡単な料理で、それでいてバズる特徴としての目から鱗的な打ち出しを必ずひとつ前面に押してくる。リュウジさんは、カレーやスパゲティも電子レンジでかんたんに作ることができると伝道してきた。
こういったYOUTUBEとか、ネット上の料理専門サイトとかで、無料で無限の内外レシピが見られるような現状で、本書は表紙にある通り、「著者累計」とは付言しながらも「15万部」の売上を誇っているのだから立派なものだと思う。
上記で、書名を『3000日以上、毎日スープを作り続けた・・・』と端折ったが、とにかく本書はタイトルが長い。正確に申せば、『3000日以上、毎日スープを作り続けた有賀さんのがんばらないのにおいしいスープ』という書名である。私が今まであらゆるジャンルで読んできたなかでも、おそらく最長級のロングタイトルだと思える。こういった長いタイトルは、従来の出版の常識ではNGとされた長さである。それがこうして出てくるのは、ひとつには「差別化」というマーケティング的発想もあるとは思うが、それ以上に、異種メディア間の競争となっている状況の中で、SNS的な訴求、すなわち、「口語的呼びかけ訴求」とでも言えるようなアピールを目指したということもあるのではないかと私は拝察する。
シンプルなスープ49種レシピを紹介
「3000日以上毎日スープを作り続けた有賀さん」だが、本書に載っているレシピは49種類である。
「サバ缶とトマトの味噌汁」とか、「ツナ缶とレタスのスープ」とか、「納豆とチーズと豆腐の味噌汁」とか、「ザク切りキャベツのソーセージスープ」とか、1~2種類の野菜と家にありそうな材料で簡単に作れそうなレシピが載っている。
有賀さんの主張も「かんたんさ」である。
本の冒頭で有賀さんは、「ちょっと待って下さい」と注目を引き、「ちゃんとした料理ってなんでしょう?」と疑問を投げかける。
「お店みたいにおしゃれな盛り付け?」
「テーブルいっぱいに並ぶごちそう?」
いえいえ、
「トマトにオリーブオイルをかけて、塩をぱらり」、これだって料理です。
「ピーマンをフライパンで焼いて、しょうゆをたらり」、これだって料理です。
と、料理はたいへんだという常識を否定する。
料理のかんたんさとは
有賀さんは、味付けの基本は、次の三点だという。
- オイル(油)・・・バターやオリーブオイル、ごま油など。
- しょうゆや塩や味噌といったシンプルな調味料。
- かつおだしや昆布だしといった「だし」。
このシンプルな味付けをもって、旬(しゅん)の野菜を使用すれば、かんたんに誰でもおいしい料理がつくれるという。
しかも、時間がないときには、ツナ缶やサバ缶といった家庭に常備の缶詰を使えば、材料を買いそろえる手間ヒマもはぶけるというのだ。
バズっている出版社
本書を出しているのは、文響社という、今時バズっている出版社である。社名で聞いたことがなくても、以下の書名を見れば思い出す筈だ。
- 『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』・・・シリーズ累計150万部。
- 『超一流の雑談力』・・・シリーズ累計71万部。
- 『うんこドリル』・・・シリーズ累計520万部。
こういった身軽でベンチャー的発想を持った出版社が、停滞感著しい出版不況のなかでも元気をもっているというのは、私には好ましく思える。
こうした出版社がたとえゲリラ的にではあっても、日本のパブリッシャーたちや書籍出版界の現状に今後も活発な刺激を与えてくれることに期待したい。
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