インド 哲学/思想 詩歌

インドのノーベル文学賞詩人 タゴール

2020年5月7日

タゴール詩集』 ラビンドラナート・タゴール著,    山室 静 訳

  • 著者: ラビンドラナート・タゴール著, 山室 静 訳
  • 出版社: 彌生書房
  • 言語: 日本語
  • 発行日: 1966年10月5日
  • 版型: 単行本
  • 価格(税込): 絶版

 

アジア人に与えられた初めてのノーベル賞

アジアでアジア人に与えられた初めてのノーベル賞はどんな分野のものだったのかと言えば、ノーベル文学賞であった。それは、1913年に英国の植民地だったインドの詩人ラビンドラナート・タゴール(1861年~1941年)に与えられた。

タゴール作品がノーベル賞受賞に有利だった点は主な点はと言えば、ノーベル賞候補の論文や作品は主に英語や西欧の言葉で審査されるので、英語で表現したタゴールは審査対象になりやすかったことである。インドは英国の植民地だったので、英語が国の公用語として強制的に使用が義務付けられた過去があった。インドには地方語がたくさんある。タゴールは最初はベンガル語で作品を書いていたが、1909年にベンガル語の詩集『ギタンジャリ』を自分で英訳して刊行した。この英訳詩集は、アイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツ(1865年~1939年)から賞嘆されて、アジアの一詩人が欧州の文学界の注目を一躍集めることとなった。ちなみに、イェイツは、1913年のタゴールの授賞の10年後の1923年にノーベル文学賞を受賞した。

こうした、英語など欧州言語で論文や作品が書かれていないと、どんなに優れた論文や作品でもノーベル賞候補にあがってこないという問題は昔から現在に至るまでずっと存在している。科学論文は英語で書くのがほぼ当たり前となっているが、1968年にノーベル文学賞を日本人で初めて受賞した川端康成は英語で作品を書いたわけではなかったから、ノーベル委員会にも最初はまったく候補としてあがらなかった。『源氏物語』や現代の日本文学を英訳して欧米に精力的に紹介したアメリカの研究者エドワード・サイデンステッカー(Edward G. Seidensticker, 1921年~2007年)が川端作品を英訳してからようやくノーベル委員会の目に触れるようになったのである。だから、川端康成が自分がノーベル賞をもらえたのはサイデンステッカーのおかげだと言って、サイデンステッカーにノーベル賞の賞金の半分を分け与えたというのは、有名な話である。

 

タゴールの詩

本当ならば、タゴールの作品はベンガル語で読むべきなのだと思うが、私はベンガル語がわからないので、英訳と和訳とでタゴールの詩を読んできた。

私の好きな詩:「この偉大な宇宙の中に」の最初と最後だけ数行ずつを以下に引く。

 

この偉大な宇宙の中に

巨大な苦痛の車輪が廻っている

星や遊星は砕け去り

白熱した砂塵の火花が遠く投げとばされて

すさまじい速力でとびちる

・・・

どこにこのような、名もなき、光り輝く追求

路から路へと辿る共々の巡礼があろうか?

火成岩をつき破るこのように清らかな奉仕の水

このようにはてしない愛の貯えがあろうか?

 

********

 

Rabindranath Tagore   Collected Works

  • 著者: Rabindranath Tagore
  • 出版社: Delphi Publishing Ltd
  • 言語: English
  • 発行日: 2017年
  • 版型: Kindle版
  • 価格(税込): ¥99-

(iPadのKindleアプリ)

 

詩「この偉大な宇宙の中に」の上記の部分は、英語ではどのようになっているのか、英訳詩を以下に引いて比べてみたい。

 

IN THIS GREAT Universe 

The giant wheel of pain revolves; 

Stars and planets split up; 

Sparks of fiery dust, far-flung, 

Scatter at terrific speed

・・・

Is there anywhere such quest, nameless, radiant, 

Such pilgrimage together, from road to road? 

Such pure waters of service, breaking through igneous rocks, 

Such endless store of love?

 

最初の詩節では、Stars, Sparks, Scatter が文頭で韻を踏み、

最後の詩節では、Such, Such, Such と同じ語が文頭で繰り返し出て強調の効果で盛り上げて締めている。

上記のように、和訳版と英語版を読み比べると、英語版のほうが詩としての出来栄えは遥かに上だとわかるだろう。

タゴール詩集には、素晴らしい詩がたくさんある。

ぜひとも英語版でも読んでほしいと思う。

 

  • この記事を書いた人
  • 最新記事
石川 雅一

石川 雅一

 東証ペンクラブ 会員。学校法人評議員。 元日本放送協会で国際報道に従事。アフガニスタン内戦、カシミール内戦、パンチャヤト大暴動( ネパール)、湾岸戦争、アメリカ航空宇宙局(NASA)、国連安全保障理事会、ニューヨーク市警、米国核廃棄物、ロスアラモス国立研究所、米国海軍、米加漁業紛争、京都の歴史文化伝統産業などを取材。国際機関アジア太平洋放送開発機構講師(JICA専門家)としてクアラルンプールでアジア各国の放送局のジャーナリストを育成指導。金融市場分析のテクニカルアナリストとして日本の全産業三千数百社の上場企業のテクニカル分析をダイヤモンド社で三季にわたって完遂。  早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程中途退学。早稲田大学大学院商学研究科専門職学位課程修士(研究科長賞受賞)。MBA( Le Cordon Bleu; Global Service Business, WBS)。Certified Financial Technician(CFTe Ⅱ)。 一級小型船舶操縦士、剣道初段、趣味は能楽。

-インド, 哲学/思想, 詩歌

Copyright© 石川雅一の書籍漂流  , 2020 All Rights Reserved.